拉致被害者の子供5人の帰国から1カ月が過ぎたが、次の進展はない。「国は真剣に取組んでいるのか」。彼は街頭演説で訴えている。
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6月24日に公示された参院選で候補者たちの多くが言及せず、後ろに押しやられた問題がある。北朝鮮による日本人拉致事件だ。
被害者の子供5人の帰国は実現したが、曽我ひとみさんの家族との再会問題は進まない。そして北朝鮮により「死亡・不明」とされた被害者10人については、5月22日の日朝首脳会談で金正日総書記が「白紙からの再調査」を約束したが、両政府からはいまだ何の具体的な進展も公表されない。
「なし崩しの防波堤」に
拉致の調査に取組む民間組織、特定失踪者問題調査会によれば、拉致された疑いのある日本人は他にも相当いる。
実際、被害者を日本政府認定の15人だけとみる向きはほとんどない。「少なくとも100人以上」との指摘もある。
しかし、首脳会談以降、小泉首相は金総書記を「頭の回転が速い」などと誉め、総書記の意向をブッシュ大統領に伝えるメッセンジャーのような行動を取り始めた。
「首相は北朝鮮との国交樹立で名前を残したいとの意欲に取りつかれているのでは」と関係者の多くは口にする。
「何としてでも拉致問題にケリをつけ、来年秋までには小泉政権下の日本と国交正常化する。記念イベントの計画も練られている」との情報も、北朝鮮サイドから流れている。
公示日の朝、東京選挙区の増元照明候補(48)は街頭で声を張り上げた。「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)事務局次長である。
「北朝鮮の望む、そして日本政府の一部が望んだ日朝国交正常化の道、拉致問題の幕引き、それを押しとどめたのは国民の皆さんのひとりひとりの怒りの声でした」。
「いま日本政府がやるべきことは、100人以上の拉致被害者を直ちに帰さなければ国交正常化はできないということを、金正日に伝えることではないでしょうか」。
増元氏は、「幕引きに向けたなし崩しの流れへの防波堤」になるため無所属で立候補した。拉致問題を前面に掲げる候補者としては唯一の存在だ。
「本当に国が動いてくれたら、家族会の僕たちが動く必要はなかった。横田(滋・早紀江)さんたちが全国を回り、体をボロボロにする必要もない。国をつかさどっている人たちは真剣にこの拉致問題に取り組んでいるのか。やはり拉致被害者家族が国会の中で議論していかなければ何も変わらないんじゃないかと考えたわけです」。増元氏はそう話す。
悩んだ末に「運命」感じ
2歳年上の姉るみ子さん(当時24歳)は1978年8月、郷里の鹿児島県の浜辺から市川修一さん(当時23歳)とともに北朝鮮工作員により拉致された。家族会の一員として救出運動に取組んできた父は、一昨年9月に金総書記が拉致を認めたその翌月、「俺は日本を信じる。だからお前も日本を信じろ」との言葉を言い残して病気で他界した。生存が確認された被害者5人が日本の土を踏んだ2日後のことだった。
この3月、悩んだ末に、24年間勤めた水産卸売会社を退職した。この出馬について、家族会の一部に慎重論があったのも事実だ。
「姉の安否は北朝鮮により死亡と発表されたまま膠着状態が続いている。その一方で会社の仕事もある。姉を取り返すにはどうしたらいいのか。悩んでいる中で、目の前に参院選があった。その時、運命みたいなものを感じてしまったんですね」
もし政府が拉致問題を安易に切り捨て国交を急ぐなら、それは国が、国民の安全保護という最低限の義務さえ放棄したことになる。
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